実働時間とは?勤務時間・就業時間との違いから計算方法、勤怠管理のポイントまで徹底解説

2025.8.18

実働時間とは?勤務時間・就業時間との違いから計算方法、勤怠管理のポイントまで徹底解説

この記事の目次

1.実働時間とは?基本的な定義と労働時間の種類

正確な実働時間を記録するためのタイムカードとキーボード

実働時間の正確な定義

「実働時間」と「勤務時間」、これらの言葉の違いを明確に説明できるでしょうか。多くの企業では、これらの労働時間の定義が曖昧なまま運用され、意図せず法令違反や未払い賃金といった労務リスクを抱えているケースが少なくありません。本記事では、労働基準法における「実働時間」の正確な定義から、混同しがちな「就業時間」や「所定労働時間」との違いまでを徹底的に解説します。この記事を読めば、勤怠管理における潜在的なリスクを回避し、コンプライアンスを遵守した健全な職場環境を構築するための確かな知識が身につきます。

実働時間は、労働基準法で「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」と定義されており、休憩時間を除いた純粋な労働時間を指します。法定労働時間は原則として1日に8時間、1週間に40時間が上限と定められており、これを超過した場合は時間外労働として割増賃金の支払い義務が発生します。

実務上は、会社に拘束されている「拘束時間」から休憩時間を差し引いたものが実働時間として計算されるのが一般的です。例えば、9時から18時までが勤務時間で、その間に60分の休憩がある場合、実働時間は8時間となります。

労働時間に関する基本的な用語

以下の表で、労働時間に関連する主要な用語を整理します。

用語

概要

就業時間

就業規則で定めた始業から終業までの時間枠(休憩時間を含む)

所定労働時間

企業が就業規則で定める、休憩時間を除いた労働時間。法定労働時間の範囲内で設定される

法定労働時間

労働基準法で定められた労働時間の上限(1日8時間・週40時間)

実働時間

実際に労働した時間。所定労働時間から休憩などを除いた純粋な労働時間

残業時間

実働時間が所定労働時間または法定労働時間を超えた部分

労働基準法では、労働時間が6時間を超え8時間以下の場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも60分の休憩を与えなければならないと義務付けられています。

2.混同しやすい「実働時間」と他の時間の違いを徹底比較

終業時刻を指す時計と業務を終えパソコンを閉じるビジネスパーソン

実働時間と勤務時間の違い

勤務時間は、一般的に労働者が職場に拘束されている総時間(始業から終業まで)を指し、休憩時間を含みます。一方、実働時間は勤務時間から休憩時間を除いた、実際に業務に従事した時間です。例えば、9時から19時まで会社にいて休憩が2時間の場合、勤務時間は10時間、実働時間は8時間となります。

実働時間と就業時間の違い

就業時間は、就業規則で定められた始業時刻から終業時刻までの時間を指し、通常は休憩時間を含みます。勤怠管理システムの打刻記録上は「出社時刻から退社時刻まで」の時間として扱われることが多く、休憩時間が1時間含まれるケースでは、就業時間が9時間であっても実働時間は8時間となります。

実働時間と所定労働時間・法定労働時間の違い

所定労働時間は、企業が就業規則で定めた正規の労働時間です。例えば、企業が1日の所定労働時間を7時間と定めている場合、休憩時間を除いた実働が7時間を超えた分は残業となります。さらに、実働時間が法定労働時間(1日8時間・週40時間)の上限を超えると、その時間は法定時間外労働となり、割増賃金の支払いが必要です。

実働時間と残業時間の関係

残業時間は、実働時間が所定労働時間または法定労働時間を超えた場合に発生します。特に、法定時間外労働が月45時間、年360時間の上限を超える場合は、36協定の特別条項が必要です。また特別条項を結んだ場合でも、年720時間、月100時間未満(休日労働を含む)2~6か月平均80時間以内という上限があります。さらに、月60時間を超える時間外労働に対しては50%以上の割増賃金が義務付けられており、2023年4月1日からは中小企業にも適用されています。

3.実働時間の計算方法と具体例

実働時間の計算に欠かせないカレンダーと電卓、時計のイメージ

実働時間の基本的な計算式

実働時間は、以下の式で計算できます。

実働時間 = 退勤時刻 - 出勤時刻 - 休憩時間

例えば、8時30分に出勤し18時30分に退勤、その間に90分の休憩を取った場合の実働時間は以下の通りです。

●拘束時間

18時30分 - 8時30分 = 10時間

●実働時間

10時間 - 1時間30分(90分) = 8時間30分

休憩時間の扱いと実働時間への影響

労働基準法第34条では、休憩時間は労働時間の途中に与え、労働者が自由に利用できるものでなければならないと定めています(mhlw.go.jp)。休憩を複数回に分割して取得することも、合計時間が法定の基準を満たしていれば適法です。電話番や来客対応をしながらの「手待ち時間」は、使用者の指揮命令下にあると判断されるため休憩時間には含まれず、実働時間として扱われます。

具体的なケースで見る実働時間の計算例

勤務パターン

出勤

退勤

休憩

実働時間

一般事務職

9:00

18:00

60分

8時間00分

短時間勤務(パート)

9:00

17:30

60分

7時間30分

変形労働時間制(ITエンジニア)

10:00

20:00

60分

9時間00分

長距離ドライバーやバス運転手といった自動車運転業務に従事する労働者は、2024年4月から適用された改善基準告示の改正により、年間の拘束時間の上限が原則3,300時間(労使協定により最大3,400時間まで延長可能)に引き下げられました。このように、業種によっては特別な規制があるため、自社の業態に合わせた勤怠管理が不可欠です。

4.実働時間の正確な把握が重要な理由と勤怠管理のポイント

適切な勤怠管理が求められる様々な職種で働く従業員たち

なぜ実働時間の正確な把握が必要なのか

実働時間を正確に把握することは、企業にとって極めて重要です。主な理由として以下の3点が挙げられます。

  • 法令違反リスクの回避

    サービス残業や36協定違反を防ぎ、労働基準監督署からの是正勧告を回避します。

  • 適切な給与計算の担保

    残業代や深夜手当などを正確に計算し、未払い賃金問題を未然に防ぎます。

  • 生産性分析と業務改善

    労働時間の実態を可視化し、長時間労働の是正や業務プロセスの改善に繋げます。

厚生労働省の報告によると、毎年多くの企業が賃金不払残業について是正指導を受けており、不適切な時間管理が重大な経営リスクに直結することが示されています。

勤怠管理における課題と重要性

しかし、勤怠管理の実態には課題も多く、弥生株式会社が2025年に発表した調査によると、勤怠管理にシステムを導入している企業は28.1%にとどまり、Excel等での管理が67.3%、手書きが24.7%という状況です。(複数回答)手作業による管理は、計算ミスや改ざん、業務の属人化といったリスクを内包しており、正確な実働時間把握の妨げとなるため、早急なデジタル化が求められます。

勤怠管理システム導入のメリット

効果

具体的な内容

法令順守の強化

打刻データが客観的な記録として自動保存され、36協定の上限超過などをリアルタイムで警告できる

業務効率化

給与計算ソフトとの連携により、手計算を廃止し、人事・労務担当者の集計作業時間を大幅に短縮できる

多様な働き方への対応

リモートワークや直行直帰に対応したモバイル打刻機能で、場所を選ばない柔軟な勤怠管理が可能になる

従業員満足度の向上

従業員自身がスマートフォンなどから自身の残業時間や休暇残日数などをいつでも確認でき、透明性が高まる

これらのメリットは、バックオフィス業務全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進にも直結し、企業全体の生産性向上に貢献します。

5.実働時間に関するよくある質問と回答

実働時間に関するよくある質問(FAQ)

中抜けや遅刻・早退は実働時間にどう影響する?

業務時間中の私用による外出(中抜け)は、会社の許可を得て労働から完全に解放されている場合、その時間は休憩時間として扱われ、実働時間から除外されます。遅刻や早退は、その時間分だけ実働時間が短くなるため、給与計算上は不就労時間として控除されるのが一般的です。

移動時間や手待ち時間は実働時間に含まれる?

使用者の指揮命令下にある移動時間は、実働時間とみなされます。例えば、出張先への移動中に業務資料の作成を命じられている場合や、次の訪問先へ向かうための移動時間は労働時間に該当します。一方で、通勤時間のように、労働者の自由な利用が保障されている時間は実働時間に含まれません。

着替えや準備時間は実働時間に含まれる?

会社の規則や指示により、指定された制服や作業服の着用が義務付けられており、その着替えを事業所内の更衣室などで行う必要がある場合、その着替え時間は労働時間とみなされるのが原則です。実際に、大手家具販売店のイケア・ジャパンでは2023年9月から着替え時間を1日10分(入退勤各5分)有給化し、ニトリでは2023年9月から物流センター従業員の着替え時間20分を労働時間として賃金支払いを開始しました。

十分前出社は実働時間に含まれる?

会社が「10分前出社」を推奨しているだけで、強制力がなく、遅れても懲戒処分などの不利益がない場合は、労働者の自由な裁量とみなされ、賃金支払いの義務は生じません。しかし、朝礼への参加が義務であったり、出社しないと人事評価に影響したりするなど、事実上強制されている場合は、始業時刻前であっても実働時間として扱われ、賃金の支払い対象となります。

6.まとめ

適切な労働環境でいきいきと働く笑顔のビジネスパーソン

実働時間の理解は適切な労働環境の第一歩

実働時間を正しく理解し、就業時間や残業時間と明確に区別して管理することは、労働者の健康を守り、企業のコンプライアンスを徹底する上で最も重要な課題の一つです。労働時間に関する正しい知識を身につけ、勤怠管理システムなどを活用して適切な運用を行うことで、生産性の向上と従業員エンゲージメントの両立が可能となり、持続可能な企業成長の基盤を築くことができるでしょう。

この記事を書いた人

宮下雄

フリグラム株式会社 代表取締役

“自然と成果が出る仕組みづくり”をテーマに、フリグラムを2022年に創業。現場の一次情報を大切に、細部までこだわった設計で“使いやすさ”と“成果”を両立した業務改善システムを開発しています。

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