ICカード勤怠管理システムのすべて 導入メリットから選び方、おすすめシステムまで徹底解説
2025.9.18

この記事の目次
タイムカードの集計作業や打刻漏れ、不正打刻といった勤怠管理の課題は、多くの企業で人事・労務担当者の頭を悩ませています。特に2019年の働き方改革関連法施行により、労働時間の客観的な把握が法的に義務化され、従来のアナログな管理手法ではコンプライアンスリスクも無視できません。
このような課題を解決する強力な一手となるのが「ICカード勤怠管理システム」です。社員が普段使っている交通系ICカードや社員証をかざすだけで、正確な出退勤時刻を自動で記録・集計し、手作業によるミスや手間を劇的に削減します。
本記事では、ICカード勤怠管理の基礎知識から、自社に最適なシステムの選び方、具体的なおすすめ製品までを網羅的に解説します。導入によって得られる業務効率化やコスト削減、コンプライアンス強化といったメリットを具体的に理解し、勤怠管理のDX(デジタルトランスフォーメーション)を成功させるための一歩を踏み出しましょう。
1.ICカード勤怠管理の基礎知識

勤怠管理で使えるICカードの種類と規格
勤怠管理で利用されるICカードには、主に「FeliCa(フェリカ)」と「MIFARE(マイフェア)」という二大規格が存在します。日本国内ではSuicaやPASMOといった交通系ICカードの多くがFeliCaを採用しており、一方で社員証や入退室カードなどではMIFAREが広く用いられています。
株式会社SUNTACソリューションズの資料では、多くのICカードリーダーがSuica、PASMO、ICOCAなどのFeliCa系カードとMIFARE仕様カードの両方に対応可能であると説明されており(suntac-sol.jp)、従業員が持つカードの種類を問わず柔軟な運用が可能です。
規格 | 主な利用シーン | 周波数 | 勤怠管理での利点 |
FeliCa | 交通系カード、電子マネー | 13.56MHz | 従業員が既に所持している場合が多く追加コストが小さい |
MIFARE | 社員証、入館証 | 13.56MHz | カード単価が比較的安価で大量発行向き |
eLWISE | 公共分野・自治体システム | 13.56MHz | 公共系システムとの親和性 |
FeliCaとMIFAREは、いずれも13.56MHzという同じ周波数帯の電波を利用しているため、一つのリーダーで両方のカードを読み取れる「マルチリーダー」での一括運用が容易です。これにより、異なる種類のカードが混在する環境でもスムーズな導入が実現します。
ICカードリーダーの種類と打刻準備
ICカードリーダーには、大きく分けて「据え置き型」と「PC接続型」の2種類があります。
据え置き型は、オフィスの入り口や共有スペースに設置する単独で動作する端末です。ネットワーク接続機能を内蔵しており、LANケーブルやWi-Fi、モバイル回線を通じて打刻データを直接クラウドサーバーへ送信します。一方、PC接続型はUSBケーブルでパソコンに接続して使用する小型のリーダーで、専用のソフトウェアを介して打刻データを勤怠管理システムに同期させる方式です。
システムを導入する前には、以下の準備が必要です。
カード情報と従業員の紐付け
使用するICカードの固有ID(UID)と従業員情報をシステムに登録し、誰の打刻かを識別できるように設定します。リーダー設置場所の環境確認
据え置き型リーダーを設置する場合は、電源とLANケーブルの配線、またはWi-Fiの電波強度を確認します。勤怠管理システムとの連携設定
導入する勤怠管理システムとICカードリーダーが正しく通信できるよう、初期設定やAPI連携を行います。
例えば、「マネーフォワード クラウド勤怠」のような主要な勤怠管理システムでは、PC接続型の「PaSoRi RC-S300」や据え置き型の「ピットタッチ・ビズ」など、複数のリーダー端末を公式にサポートしています。端末の価格は、数千円で購入できるPC接続型から、高機能な据え置き型では十万円を超えるものまで幅広く存在します。
ICカード打刻のメリットとデメリット
ICカード打刻の最大のメリットは、労働時間を客観的かつ正確に記録できる点です。
厚生労働省が策定した「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」では、使用者が始業・終業時刻を確認し記録する方法として、タイムカードやICカード等の客観的な記録を基礎とすることが原則とされています。
ICカード打刻はこの要件を直接的に満たすため、コンプライアンス強化に直結します。実際に、ICカードによる勤怠記録は多くの企業で導入が進んでおり、客観的な記録方法として浸透しつつあります。
メリット
打刻データの自動集計で月次締め作業を短縮
カード固有IDにより「なりすまし」を防止
交通系カードとの兼用で管理コスト削減
デメリット
カード紛失時の再発行コストとリスク
据え置き型リーダーは初期費用が高め
打刻忘れ時の事後修正ワークフローが必須
高機能な据え置き型リーダーの中には、ネットワーク障害や停電時にも対応できる製品があります。
例えば、打刻データを端末内部に一時保存する機能を持ち、通信が復旧した際に自動でデータを送信するモデルや、内蔵バッテリーによって停電時でも数時間から数日間稼働し続けるモデルなどがあり、事業継続計画(BCP)の観点からも有効です。
2.自社に最適なICカード勤怠管理システムの選び方

勤怠管理システム選定の重要ポイント
導入目的の明確化
なぜシステムを導入するのかを定義します。「法改正への対応」「給与計算までの工数削減」「ペーパーレス化によるDX推進」など、目的によって重視すべき機能は異なります。打刻方法と勤務形態への対応
オフィス勤務者にはICカード、リモートワーカーや直行直帰の営業担当者にはスマートフォンのGPS打刻や顔認証など、多様な働き方に合わせて複数の打刻方法を併用できるかを確認します。給与計算ソフトとの連携
CSVファイルでの出力に加え、主要な給与計算ソフトとAPIで自動連携できるかを確認しましょう。これにより、手作業でのデータ転記が不要になります。コスト構造の把握
初期費用となるリーダーの購入費に加え、従業員一人あたりの月額利用料を合算した総保有コスト(TCO)で比較検討することが重要です。サポート体制と拡張性
導入後のトラブルに備え、電話やチャットでのサポート窓口の対応時間を確認します。また、将来的に人事労務システムや経費精算システムなど、他のサービスと連携できるかといった拡張性も重要な選定基準です。
市場調査会社のアイ・ティ・アールが発表した市場レポートによると、国内の就業管理市場は2022年度に328億円(前年度比20.2%増)と急成長しており、2025年度にはSaaS(クラウド型サービス)が市場全体の8割を占めると予測されています(it.impress.co.jp)。
このトレンドからも、将来的な拡張性やメンテナンス性を考慮し、クラウド型のシステムを前提に選定することが賢明です。
ICカード勤怠管理が適している企業の特徴
実店舗や工場など共有端末での打刻が必要
既に社員証や交通系カードを支給済みで追加投資を抑えたい
シフト勤務や夜勤が多く、打刻漏れを自動検知したい
セキュリティゲートと勤怠を同じカードで統合したい
特に、小売店や飲食店などの対面接客業では、友人や同僚にタイムカードを代わりに押してもらう「代理打刻」といった不正が課題となりやすいため、ICカードは効果的です。
カード固有のIDで本人確認を行うため、不正打刻を物理的に防止できます。さらに、オフィスの入退室ゲートと連動させれば、「誰がいつ出入りしたか」という客観的な記録と勤怠データを紐づけることも可能です。SUNTACの解説記事でも、こうしたICカード打刻による不正抑止効果の高さが強調されています(suntac-sol.jp)。
3.おすすめのICカード対応勤怠管理システムを比較

主要なICカード対応勤怠管理システム
システム名 | ICカードリーダー例 | 月額料金目安 | 特筆機能 |
|---|---|---|---|
PaSoRi RC-S300(公式サイトで対応確認済み)など | 300円/人 | 多数の外部サービスと連携可能。AIを活用したシフト管理システムとの連携も。 | |
PaSoRiシリーズ(RC-S380/S推奨)、ACR1555U(iOS対応)など | 200円/人(1機能利用時) | 「ジョブカン経費精算」と連携し、交通系ICカードの利用履歴から運賃データを取り込み可能。 | |
ピットタッチ・ビズ、PaSoRi RC-S300/S1 | 従業員数に応じた月額固定プラン制 | 同社の給与・会計・経費精算システムとシームレスに連携し、バックオフィス業務全体を効率化。 | |
PaSoRi(PC接続タイプ)など ※詳細は要確認 | 300円/人 | 位置情報(GPS)を記録できるスマートフォン打刻とICカード打刻を柔軟に併用可能。 | |
※公式サイトで対応機種の確認が必要 | 300円/人 | 「freee工数管理」との連携により、プロジェクトやタスクごとの労働時間を集計可能。 |
例えば「KING OF TIME」は、Wi-Fi経由で複数拠点に設置できる専用端末に加え、1台数千円から導入できるPC接続型のPaSoRiにも対応しており、小規模な事業所でも手軽に始められます。
また、「ジョブカン勤怠管理」は、同シリーズの経費精算システムと連携することで、交通系ICカードの利用履歴から交通費を自動で取り込んで精算できるユニークな機能を備えています。
システム導入時の注意点と成功の秘訣
データの一括登録準備
従業員IDとICカードの固有ID(UID)を紐付けた一覧をCSVファイルで事前に準備しておくと、初期設定がスムーズに進みます。運用ルールの整備
打刻を忘れた際の申請・承認フローを明確にし、就業規則に明記しておくことで、導入後の混乱を防ぎます。並行運用期間の設定
導入後1ヶ月程度は、従来の勤怠管理方法(タイムカードなど)と並行運用し、データの差異や打刻漏れの傾向を把握・改善する期間を設けることが成功の鍵です。サポート体制の確認
給与締めなどの繁忙期に問い合わせが必要になる場合に備え、サポート窓口の対応時間や連絡方法を事前に確認しておきましょう。予備端末の確保
リーダー端末が故障した場合に業務が滞らないよう、安価なPC接続型リーダーなどを予備として一台確保しておくと安心です。
4.まとめ
ICカード勤怠管理で業務効率化を実現

勤怠管理の課題解決にICカードを活用しよう
ICカード勤怠管理システムは、客観的かつリアルタイムな勤務データを自動で収集・集計することで、法令遵守、業務効率化、そして不正打刻の防止という3つの重要な課題を同時に解決する有効な手段です。
市場全体がSaaS中心へと移行している現在、クラウド型のシステムを選べば、高額なサーバー導入費用などをかけずにスモールスタートが可能です。多くの従業員が日常的に利用している交通系ICカードをそのまま活用できるため、新たなカードを発行する手間やコストも最小限に抑えられます。
この機会に既存の資産を有効活用し、勤怠管理のDXを一気に推進してみてはいかがでしょうか。
この記事を書いた人
宮下雄
フリグラム株式会社 代表取締役
“自然と成果が出る仕組みづくり”をテーマに、フリグラムを2022年に創業。現場の一次情報を大切に、細部までこだわった設計で“使いやすさ”と“成果”を両立した業務改善システムを開発しています。


