建設業界のどんぶり勘定から脱却。kintoneで実現した「見える化経営」の全貌

株式会社仙敷工業

公開日:

2025.7.16

建設業界では長年、見積もりから利益管理まで「どんぶり勘定」が当たり前とされてきました。しかし、名古屋の『ザ・ランドマーク名古屋栄』など大規模プロジェクトを手がける株式会社仙敷工業は、この業界の常識に挑戦。kintoneベースのシステム導入により、月間40~50時間の工数削減と社員のモチベーションアップを実現しました。

創業者である仙敷篤憲様が語る、中小建設業のDX成功の秘訣とは。社員の反対をどう乗り越えたのか。数字の「見える化」が会社にもたらした良い影響とは――。その実践的な取り組みをお聞きしました。

この記事の目次

企業紹介

株式会社仙敷工業は、愛知県東海市に本社を構える空調配管工事会社です。名古屋駅のゲートタワーや大名古屋ビルヂング、ザ・ランドマーク名古屋栄など、名古屋を象徴する大型商業ビルや工場の空調配管工事を数多く手がけています。「どんぶり勘定」が根強い建設業界にあって、同社はいち早く見積もりを標準化し、工数を細分化して工事単位で正確な利益率を算出する仕組みを構築。職人目線でのシステム化を推進し、業界に先駆けてデジタル化に取り組んでいます。今回お話を伺ったのは、ご自身でも20年以上の職人経験を持つ創業者の仙敷篤憲様です。

Excelの限界と「1日の工事に2時間の集計作業」という現実

フリグラム まずは、システム導入前に抱えていたビジネス上の課題についてお聞かせください。

株式会社仙敷工業 仙敷篤憲様 建設業界全体の問題として、見積もりがどんぶり勘定になりがちで、工事が終わっても利益率がはっきりしない会社が多いんです。小規模な事業者が多いので、数字を出すノウハウがなかったり、そもそも時間がない。

弊社は見積もりの段階から細かく数値化してきました。どの職人が作成しても似たような見積もり金額になるようにはなったですが、問題は工事の利益率でした。日報から手拾いで工数をExcelに入力していたですが、入力した文字が少し違うだけで集計で数字が拾えなかったり...。

フリグラム 具体的にどれくらいの手間がかかっていたですか?

仙敷様 工数の入力に社員が丸1日費やすこともあり、極端なものだと「1日だけの万円の工事のために、2時間かけて数字を出している」なんてこともありました(笑)。弊社は半年間かけて行う数千万円の工事から1日万円の工事まで多様なんです。全部の工数や原価を数字で表そうとすると、手間の割に合わない。人手が足りない時にこれをやると、社員の残業時間も増えてしまって。

kintoneとの出会い。「職人に近いシステムが欲しかった」

フリグラム 様々なツールがある中で、最終的にフリグラムのkintoneベースのシステムを選ばれた決め手は何だったでしょうか?

仙敷様 まず、一般的な建設業の原価管理システムは1000万円以上かかると聞いていて、ちょっと弊社にはすぎるなと。それと最悪「自社でも触れるシステム」であることも重要でした。

YouTubeで調べたら、kintoneで建設業の業務管理をしている事例がいくつも出てきて、「建設業にとってkintoneって良さそうだな」と感じました。最初は別の業者さんから財務会計系のシステムを提案されたですが、私はどちらかというと職人さんに近い方のシステムが欲しくて。

フリグラム 確かに、財務会計寄りのシステムと現場寄りのシステムでは使い勝手が全然違いますよね。

仙敷様 そうなんです。それでkintoneでやりたいと伝えたら、kintoneを専門にしているフリグラムさんを紹介していただきました。東海市で同じ地域ですし、創業者同士というのも大きかったです。Zoomばかりじゃなくて、実際に顔を合わせて打ち合わせできるのはありがたいですね。正直、他社さんは特に検討しませんでした(笑)。

「この規模で要るの?」社員の反対をどう乗り越えたか

フリグラム 社長としてkintone導入の決断は早かったと思いますが、社内で反対意見はありませんでしたか?

仙敷様 正直すごくありましたね(笑)。「こんなの、この規模で要るの?」とか「数字数字で社員を追い詰めるの?」みたいな。毎日更新される利益率が100%からどんどん減っていくので、社員のプレッシャーになるんじゃないかと心配する声もありました。

あと、「同じ規模の同業他社はこんなのやってない」という意見もありました。でも私は創業者として、どこにでもある会社を作りたいわけじゃない。「こんなすごい会社ないだろう」という会社を作りたいんです。

フリグラム その反対意見に対して、どう説明されたですか?

仙敷様 「数字って追い詰めるばかりじゃないんだよ、心に余裕を持つための数字でもあるんだよ」と話しました。例えば、利益に余裕があることが分かれば、アクセル全開じゃなくて落ち着いて品質に意識を向けられる。職人が疲れていたらピリピリ感を下げて、チームワークを大切にしながら仕事ができる。

実際、今、ザ・ランドマーク名古屋栄の5階から9階のシネマエリアを担当している社員から「金額的に厳しいです」と相談されても、kintoneでリアルタイムの数字が見えているから「今のペースで大丈夫だよ、赤字にはならないよ」と根拠を持ってアドバイスできるんです。

月間40~50時間の削減と、予想外の「喜びの共有」

フリグラム 実際にkintoneを導入してみて、どれくらいの効果がありましたか?

仙敷様 実感値で月5〜6工数(40~50時間)は削減できています。kintone導入前は、LINEで送ってもらった日報をExcelに入力し直していたですが、その作業がなくなりました。毎日1時間かかっていた作業がほぼ0になり、日曜出勤分も含めると月30時間近い削減です。材料などの他の原価を計算し、利益率を計算する作業も自動でやってくれるので、トータルで月に40~50時間くらいでしょうか。

フリグラム 工数削減以外にも効果はありましたか?

仙敷様 これが意外だったですが、社員のモチベーションがすごく上がったんです。「ここの工事、30%超えてるじゃん!」「40%いってるじゃん!」って、喜びを分かち合っている姿を見ます。新人が良い数字を出すと、周りが「すごいね、すごいね」って言ってくれたり。

当初心配していた「数字に追い詰められる」という感じは無いですね。むしろ「この数字が悪いのはなんでだろう」と冷静に分析する意識が生まれています。

フリグラム 社員さんへの定着はスムーズに進みましたか?

仙敷様 導入前は社員へ周知するのが大変だなと思っていたんです。事務所には全員が入りきらないし、工場で説明するのもどうかなと。でもフリグラムさんが近くの会議室を手配してくださって、そこで説明会を開いていただきました。

パソコンが苦手な職人も多い業界なんですが、丁寧に一つ一つ説明していただいて。社員もみんなすごく真剣に向き合ってくれたんです。その説明会で導入への不安がかなり無くなりましたね。

フリグラム 運用が始まってからのサポートはいかがでしたか?

仙敷様 私や社員からの要望に対して、迅速に対応していただいています。難しそうな要望でも粘り強く対応してくださって、フリグラムさんの工数が大丈夫かなと心配になるくらい(笑)。

印象的だったのは、社員が使わない夜中にシステムを更新してくださること。導入初期は生活リズムを変えてまで対応していただいて、うちより大変だなと思うことがしょっちゅうありました。

そして何より、システムがどんどん良くなっています。まさに「伸びしろのあるシステム」というか、kintoneの良さがすごく出ていると感じます。継続的に改善されていくので、どんなシステムに進化していくのかワクワクしています。

「会社を自動化して、職人に戻りたい」創業者の本音

フリグラム 今後の課題や展望についてお聞かせください。

仙敷様 最終目標は見積もりから請求まで全て一貫して繋げることです。今はフリグラムさんと協力しながら、kintoneで工事予定表の拡張を進めていて、これにすごく可能性を感じています。有給申請が自動で予定表に反映されたり、予定と日報に違いがあったら色が変わったり。日報の入れ忘れも可視化できれば、かなり改善できるんじゃないかと。

実は私、会社をある程度自動化して職人に戻りたいんです。20年以上職人をやってきて、職人が好きなので。そのためにも、社員一人ひとりの「あったらいいな」を実現していきたい。職人に寄り添ったシステムを、フリグラムさんと一緒に作っていければと思っています。

フリグラム 最後に、同じような課題を抱える同業他社へのメッセージをお願いします。

仙敷様 ちょっと偉そうになってしまいますが...社長が高級車に乗るくらいだったら、社員が楽になるシステムを入れましょう、と伝えたいです(笑)。

システムにお金を出せない業者さんもいると思いますが、kintoneなら自分でも触れるノーコードツールなので、小規模企業でも導入しやすい。2〜3人の業者さんでも、早い段階からkintoneに触れておけば、将来業者に依頼する時もスムーズです。

結局、年商の壁って「管理できるかできないか」の壁だと思うんです。その壁を超えようと思うなら、システムは絶対必要。早ければ早いほど良くて、小規模なうちから一つずつ作り上げていく方がいいんじゃないでしょうか。


インタビュイー 株式会社仙敷工業 代表取締役 仙敷篤憲様

20年以上の職人経験を持ち、大型商業ビルや工場の空調配管工事を手がける。建設業界の数値管理の課題に早くから着目し、kintoneを活用したシステム化を推進。「職人に寄り添うシステム」をモットーに、業界の常識に挑戦し続けている。

インタビュアー  フリグラム株式会社

『自然と成果が出る仕組みづくり』をテーマに、企業のDX推進と生産性向上を支援するシステム開発会社。現場の一次情報に基づき本質的な課題を見極め、細部までこだわったシステム設計で “使いやすさ” と “成果” を両立した業務改善ソリューションを提供している。

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